2007年3月アーカイブ

教員エッセイ:二年後への想い

 昨日、厚生労働省は国勢調査のデータを基に5年ごとに公表している「完全生命表」を公にした。それによると、日本人の2005年の平均寿命は女性が85.52歳、男性が78.56歳と確定された。2000年に行われた前回の調査と比較し、女性は0.92歳、男性は0.84歳さらに延伸しているという。その背景には、公衆衛生の向上、医療技術の進歩、食生活の改善などがあげられる。

 また、平成18年版「高齢社会白書」を開くと、2005(平成17)年9月末現在、100歳以上の高齢者が全国で25000人を超え、毎年過去最高を更新し続けているという。さらに驚かされたことには、そのうち85%を女性が占めていることであり、改めて女性の生命力の強さに感服させられた。

 実は、私もまもなく98歳になる実母を抱え、妻と2人で老老介護に日々悪戦苦闘をしている。私は5人兄弟の末っ子であるが、父は50年前、当時49歳という若さで病に倒れ、母と私を含めた5人の子どもを残して他界した。それ以来、母は、ひたすら忍の一字で5人の子どもたちを女手ひとつで育てあげた。まさしく典型的な明治の女性である。以前は、兄たちと同居していたが、母の思い通りにはいかず、結婚したばかりの私たちの許へある日突然転がり込むような形で同居することとなり、以来35年間生活を共にしてきた。私たち夫婦には女の子どもが一人いるが、彼女は既に結婚しており、これから先も地元に戻る予定は無く、私たちと同居することは皆無に等しい。いまや高齢者3人の世帯となった。年々手数が掛かっていく母を私たち夫婦だけで面倒を見ていかなければならない状況になった。

 2年ほど前、母は軽い脳梗塞を起こし、記憶や見当識障害が出現、コミュニケーションすら難しい状況になったが、妻の懸命なリハビリと介護のお蔭で今は精神機能も以前の状態にまで回復している。

 しかし、当の本人はその間の記憶は今もって定かでなく、口だけはいつもの達者な状態に戻ったことから、日々の介護に当たる妻の精神的負荷は益々増大の一途をたどっている。尿失禁や便失禁の際には暫くかしこまっているが、数時間もするとその態度は遥か忘却の彼方である。自分の思い通りにならないと、ヘルパーやケアマネジャーが訪問してきた時など自分の味方が出来たとばかり妻に毒づき、他人の同情を買おうとする作戦を展開する小賢しさも健在である。足元が見られているにも拘らずにである。

 この毒舌がある限り、100歳までは生き続けるように思われる。後2年と少々、私たち夫婦にはそれ程遠い歳月ではないが、最近とみに身体機能の低下が著しい母にとっては100歳以上の高齢者25000人の中に入るのは一大事業であると思われる。

 福島県では100歳になった県民を対象に知事賀寿が行われる。その時が訪れたら兄弟らと一緒に母を囲んでお祝いをしたいと思っているが、母への「おめでとう」の言葉は、これまでひたすら母の介護に悪戦苦闘の日々を送ってきた妻へ贈る感謝と讃辞の言葉であって欲しいと願っている。

井上秀之