安藤 勝夫の最近のブログ記事

 フランスの詩人ポール・エリュアールの言葉に「年をとる―それは年月の中で、青春を組織することだ」という、豊かに張りつめた美しい言葉があります。この言葉は、シュール・リアリスト(超現実主義者)として出発した詩人が、ナチスの支配下にあった祖国フランスにおいて、その非人間的抑圧に抵抗するリアリスト詩人として再出発する自己変革の過程を感動的に歌い上げたものです。

 この言葉にある「青春」とは、青春を謳歌する類のあのロマンティックな愛の幻想に彩られたものでは必ずしもありません。ファシズムの激しい弾圧の嵐の中で、「エルザ、エルザ、ただ君のため!」と愛する女を歌ったアラゴンの詩が、踏みにじられた祖国フランスへの愛と分かちがたく結ばれていたように、エリュアールの簡潔な詩の一節に、ナチスの非人間的抑圧に死を賭して闘った詩人の自己変革への熱い思いが詩情豊かに表現されています。この言葉は、思想・信条の枠を越えて、人間的成長を願う若い人々の瑞々しい感性に訴える含蓄に富んだ言葉ではないかと思います。

 ところで、「戦争を知らない」世代の若者たちという言葉が世に喧伝されるようになって久しくなります。戦後六十年、世の中の動きはめまぐるしく変化し、若者の意識・価値観も多様化しました。戦後民主主義の息吹の中で新憲法を学び、六十年安保の激動の時代に学生時代を送った同世代の私たちは、暗中模索の中を必死に学習に励み、明日への飛躍を夢見て青春の炎を燃え立たせましたが、若い学生との間に深い世代の溝を感ずることがあります。確かに、思想・信条、人生観、生活感覚など、40数年におよぶ世代の溝を埋め合わせるのはそう容易なことではありません。しかし、学習・教育の共通の土俵の中で、若い学生と心の通い合う共通の言葉を見いだしていきたいと願っています。

 新世紀への期待も空しく、人類の未来は必ずしも明るいとはいえません。この危機と混迷の時代にあって、若き人々が青春をいかに生きいかに学ぶべきか、今ほど問われているときはありません。私たちの生きる現代社会は、大学という温室めいた「春の城」(阿川弘之)の中で、そのうつろなぬくもりを楽しむことができるほど平穏無事ではありません。好むと好まざるとにかかわらず、歴史の荒波が大きなうねりとなって、私たちの身辺に容赦なく押し寄せてくるでしょう。

 とすれば、大学に学ぶすべての学生が、明日への力強い飛躍に向けて、厳しい現実に立ち向かう若者らしい勇気と豊かな知性、濁りのない目で真実を見抜く力を身につけて欲しいと願わずにいられません。そのためにも、絶えざる学習を通して知性を磨き、古い自己の殻を脱皮し、新しい自己へと鍛え上げて欲しいと願っています。このことこそが「青春を組織」し、青春を真に生きることであると思います。

 冬の時代にあってもなお、凍てついた土の下から、豊かな春の泉を汲み取ることができるように、豊かな明日への飛躍に向けて一歩一歩力強い前進の旅を歩み続けようではないか!この東北の母なる大地に、君たちの青春を豊かに花開かせるために!

安藤 勝夫