遠藤 寿海の最近のブログ記事

 9月に、ある特別養護老人ホームのお祭りに参加させていただき、当日までの施設の皆さんのご苦労を思った。会場の設営、必要な機材やテントの借り入れ、地域の方々への案内、家族会の方が行うバザー商品の管理、多くのボランティアのコーディネート、そして利用者さんが参加でき、楽しめるプログラムを考え、演目を披露してくださる方や模擬店出店先の方との折衝等々。これらを日々の業務の間に行うのである。施設では、なぜこんな苦労をしながらも地域を巻き込んだ行事を計画しているのだろう。

 高齢者施設に限らず、様々な福祉施設では大きな行事以外でも普段からボランティアを受け入れている。それは、施設の皆さんがボランティアの「援助」を当てにしているからではない。看護や介護など専門的な知識・技能を必要とする「援助」は、専門性と責任にもとづいて、利用者さんの安全に配慮できる職員が行うべきものであるからだ。では、なぜボランティアが必要とされるのか。私は、利用者さんの社会参加の機会を作る、ということがその理由のひとつとしてあげられると思っている。

 学校が、所属している生徒や教師、父兄以外の人間にとって入りにくい場であるように、施設も一般のものが入りにくい閉じられた空間である。しかし、学校とは異なり、施設は利用者さんにとって生活の場、すなわち、地域そのものである。私たちは学校や職場や家庭以外の様々な場で当たり前のように過ごすことができるが、利用者さんにとっては生活の大半が施設に限られてしまう。だからこそ職員の皆さんは、高齢者施設であればそれまで利用者さんが生活していた地域とのつながりを保とうと努力し、障害者施設であれば利用者さん自身が自分の生まれ育った町に出かけたり町で生活ができるようにとがんばっている。それでも職員さんの努力だけではどうにもならないことも少なくない。地域から積極的に、施設と、そして利用者さんとつながろうとしていくことが必要なのだ。

 とは言え、施設には行きにくい、ボランティアと言っても何ができるのか、と悩む人も多いだろう。だからこそ施設側ががんばって開催している地域の方が参加できるお祭のような行事に注目してほしい。はじめから「ボランティアをしなくちゃ!」と意気込んでいくのではなく、近くの施設でお祭りをやっている、そんな案内を見かけたら、ぜひ出かけて行ってみてほしい。そして利用者さんの笑顔に接してほしい。そうすれば、実際に利用者さんとの交流がはじまるし、参加した行事を話のきっかけにすることもできるだろう。職員の方と話をする機会も作れるかもしれない。次の行事の企画をお手伝いする、などの新しいボランティアの発想も生まれてくるかもしれない。地域から積極的につながっていくには、行きやすい行事をきっかけにして出かけてみる、そんな簡単なことからはじめられるのではないだろうか。

(平成18年10月4日付 いわき民報 「地域経済ウォッチング」を一部改稿)


遠藤寿海

教員エッセイ:他国の福祉政策から何を学ぶか

 スウェーデンとデンマークの精神科ケア分野の視察に行かせていただき、福祉政策が進んでいると言われる両国で、高齢者や障害者の地域での生活の豊かさ、家族に頼らない支援のしくみがあること、などを実感してきました。

 中でも看護師の役割が大きいことに驚かされました。医療面も福祉面もその中核となっているのが看護師でした。日本とは資格のあり方、病院の役割が違うのです。特に医療へのアクセスの方法は全く異なっています。住民は全員が家庭医を持っており、専門的な診断が必要な病気の場合は、診療所(通院)または病院(入院設備あり)へ紹介してもらうという流れがあります。入院しても、その期間は非常に短く、必要に応じてケア付き住宅などへ移行させ、地域の一般診療所で必要な医療を受けるという形が整っています。日本には持ち家主義が根強く残っていますが、北欧ではケア付き住宅の建設・斡旋を民間事業者が担っており、住み替えへの意識も高いようでしたし、障害のある人も、年金があれば十分に地域で生活をしていけるようになっています。

 日本とは税金の使い方も、自治体の役割分担の方法も全く違います。両国とも物価は決して安くはありません。500ml入りペットボトルの水を買うと300円ぐらい。ちょっと食事をしようと思って街に出れば1000円~1500円はかかります。この金額の25%が消費税です。他にも所得税を納めます。これらの税収で、医療を県が、社会サービス(福祉や介護)を市が提供するのです。医療費の一部や教育費が無料になり、年金の中から住居費や介護費を支払える状況が整えられます。日本と単純に比較することはできませんが、北欧の医療・福祉・教育などの制度を支えているのは、国民の高負担であることを再認識させられました。

 行き届いた福祉政策があるように見える一方で、大都市部などでは陰とも言える面も見えました。移民の問題、ホームレスの問題などです。完全に見えるセイフティネットがあるにもかかわらず、自らその庇護を拒否する人、網に救い上げられないままの人も存在します。何らかの依存症があるのでは? 帰る場所がないのでは? と思われる人に駅や通りですれ違う...街の中にはタバコの吸い殻をポイ捨て...決して光り輝くことばかりではありませんでした。

 他国に学ぶことはきっとたくさんあるのでしょう。それは良い面であったり悪い面であったり様々です。他国の良さをそのまま持ってきても日本では受け入れられないかもしれません。では、私たちは他国から何を学んで行けばよいのでしょうか? 現在、日本でも様々な福祉制度や税制が変えられようとしています。私たちは、ただ国が決めるものを受け入れるだけでなく、自分自身で日本の現状にあう方法は何なのか、何を変えて行く必要があるのかを考え、地域での生活を作っていくことが大切なのではないかと思います。

遠藤 寿海